自信のない子の唯一の長所

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「図工の時間です。皆さんに絵を描いてもらいます」

「教室を出て、校庭や学校内の好きな場所で、そこから見える電柱かビルを描きましょう

先生が授業の初めにそう言いました。

小学校の図工の時間で、私は電柱を描きました。

え?なんで電柱、、?

そう思うと思います。

私も今となっては、変なお題だったなーと思うのですが、当時は子供なので、

「電柱。こんな難しいもの描けるかなぁ・・」と素直に受け入れて思っていました。

私の通っていた小学校は、

大阪の都会にありました。

公園に桜や銀杏の木はありましたが、自然豊かではなく、

ビルやマンション、工場などがある普通の町です。

だからきっと、

小学校から見えるものはビルか電柱ということで、

こんな授業になったのだと思います。

さて私は、

校庭に座り込んで、そこから見える電柱を描くことにしました。

校庭の向こうの、道路の向こうの、マンションにかぶるように立っている電柱。

遠くにある電柱です。

遠いので、細かなところはよく見えません。

細い棒に、黒い四角いものがくっついていたり、

電線が複雑に絡まっていたりしています。

「え、遠くてよく分からないし、なんかすごく難しそう。。」

と思いました。

それまで図工の時間では、

手元にあるものや、想像で描いたりするものだったので、

物理的に距離のあるものを描くのは初めてでした。

それに動物やお花でもなく、知っているけどよく分からない工業製品です。

今までとは全然違う感覚を感じました。

「全然遠くて分からないし、電柱にくっついている黒い物体も何か分からないし、

電線も多いし絡まってる、、どう描いたらいいのかな。。」

分からないものを描くにはどうしたらいいのかな

子供ながら考えました。

周りのクラスメイトたちも、「難しい」「よく分からん」と言っていました。

私はしばらく考えて、、

「もう分からないから、見えたものをそのまま描こう。」

と思いました。

理解できないものだったので、もう理解するのを諦めました。。

理解するのは諦めて、見えてるものだけ描こう。と思いました。

そこから、ものすごい集中力を発揮しました。

「難しいけど絶対描く。これが描けたらきっと自信がつく。」

と思いました。

「絶対描く」なんて、なぜそんなに私は躍起になるのか?

それもそのはず、、私は子供の頃からとても自信のない子でした。。

クラスで一番背が高くて太っていたんです。

他の子たちは小さくて細いのに、私はブクブクのおデブ。

しかも背も高い。縦にも横にも大きい子。

家族の中でも私だけが太っていましたし、、

人と違っていることが、とてもとてもコンプレックスでした。

太っていることを、からかわれることもしばしば。。。

からかわれるのが嫌で、暴力的な態度をとったこともありました。
(劣等感のうら返し。子供とはいえ、、絶対にダメです。)

とても強い劣等感を感じていたのです。

そんな私でも、

図工の授業だけはいつも褒められていました。

よくいる、クラスにいる絵の上手い子の一人でした。

そこだけが長所だったのです。

なので、「電柱もちゃんと描きたい。」

そう思って、

「よく何か分からないけど、見えているからそのまま描こう。」

「そのまま、見えているものを描くんだ。それしかない。描くんだ。」

と電柱を一所懸命描きました。

みんなおしゃべりしながら描いていましたが、

私は一人で誰とも話さず、ものすごい集中力で描きました。

目を凝らして、、観察する。

「違う。もっと黒いところが小さい。そう、このくらいの大きさでいいかも。」

「電線は何本あるのかな。1.2.3、、、ここで丸くなってる。」

「ここになんか丸いものついてる!ボタン?分からないけど、あるから描こう。」

「また黒い物体くっついてる。今度は2つある。なんだろう。知らないけどあるから、描こう。」

そうやって、目を凝らして、

電線の数を数えて、見えているものを愚直に描き続けました。

そして、その授業が終わるころ、、

私はクタクタになっていました。

目もかすむし、頭のあたりが凝り固まっていました。

でもなんとか電柱を描きました。

その時、

クラスメイトの子がふと私の絵を見て

「すっごーい!!!うまーい!!見せて見せて!」

「え、なになに!?私も見たい!」

みんながワイワイやってきて、とても褒めてくれました。

先生もやってきて、みんなの前で見せてくれました。

私は、

「嬉しい!やったー!」

「頑張ったかいがあった!」

「見えたもの、そのままを描く。これで絵が描けるんだ!大発見だ!」

と絵を褒めてくれたこと、自分で考えて描いた方法がうまくいったこと、

それがとても嬉しかったです。

「絵はいいなぁ。みんな褒めてくれる。嬉しい。上手に描けたら嬉しい。楽しい」

私は絵を描くことの楽しさを知りました。

↓続く

才能とセンスに悶々とした、学生時代

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この記事を書いた人

サンのアバター サン 画家

画家。(アクリル画。モチーフは主に植物と風景)ギャラリー様や百貨店様での展示販売、ネット通販、レンタルなど。
台湾でアーティストインレジデンスに参加。
高槻阪急(百貨店様)にて個展。
UNKNOWN ASIA2022でレビュワー賞受賞。

みつまたアートでは、これまで得た経験と技術で、絵が描きたい方、上手くなりたい方に向けてアクリル絵の具による花や風景の描き方を教えている。

絵と花と風景と、豆と野菜が好き。脂質とホラーと寒いのが苦手。

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