光の見えないどん底から立ち上がる

課題に明け暮れた大学生活。

卒業制作は、さらに大変でした。

課題は何もかも自由。だからこそ自分が何を作りたいのか、何がやりたいか、

という自分の制作と真正面から向き合うことに悩み、

先生のチェックではなかなかアイデアが認められず、ウンウン考えて頭を悩ませました。

構想の部分でかなりエネルギーを使った後、制作する作業も思うようにいかず、

孤独な作業と睡眠不足なども重なっていました。

頑張っていても、うまくいかない。

「私って本当に才能もセンスもないのだなぁ」と落ち込み、

上手に頑張れなくて、疲弊してしまいました。

卒業制作

うまく就職活動もできず、燃え尽きてしまった私は、

すっかり挫折しました。

(挫折経験は、その後も何度も続きます)

なかなかうまく心も体も動かない中で、なんとかバイトをして凌ぐ日々。

生き方が分からず人生の迷子になりながらも、いろんな仕事を経験しました。

いくつか仕事をしながら、

ずっと心の中に、

目次

「何か生み出すこと。描くこと、作ることがしたい」

と引っかかっていました。

自信のなさから一歩踏み出せずにいましたが、

人知れず、下手くそな絵を描いていました。

当時描いていた絵

ある時ふと、「お金を貯めて個展をやってみたいな」

と思うようになり、コツコツと資金を貯め始めました。

絵の世界、アートの世界のことはよく分からないまま、

いくつかのギャラリーさんを見て回り、

貯めたお金で、レンタルギャラリーさんを1週間借りました。

初めての個展です。

ドキドキしました。

「個展をして、絵描きの世界に行く。絵の世界に入る。絵描きになるのだ」

そう思って、dmも自作して、画材屋さんに配ったりもしました。

個展に向けて絵を描いて、展示のレイアウトを考えました。

展示に必要な道具も揃えて、荷物を抱えてギャラリーさんに搬入し、

一所懸命、展示しました。

そしていざ個展開催!

・・・

あれ、、、

「誰も来ない。」

「お客さんがいない。」

「静かだ。」

ほとんど何も起こりませんでした。

結局、見に来たのは家族と友人、ギャラリーさんのお知り合いの方が少し。

売れたのはポストカードが1,000円分ほど。

あっという間の1週間。

ほどんど誰にも見られずに、過ぎていきました。

たくさんの時間とお金とパワーをかけて挑んだ初めての個展は、

まるで何もなかったかのように、

静かに終わりました。

失敗でした。

とっても苦い経験となりました。。。

ほとんど何も起こらなかった個展

翌年、

また別の場所で個展を行うことになったり、

私が絵を描いていることを周りの方に知っていただけるようになったりと、

少しずつ絵描きの道を歩むのですが、

思っているほど、前に進みません。

絵は売れず、

チャンスは得られず、

バイト生活。

個展にて

あの時燃え尽きずに、うまく就職できていたら、、と

思うこともありましたが、大学卒業当時の自分は、

自分なりに、その時の精いっぱいで生きていたことを思うと、

「私なんてこんなもの、なんだ」とも感じました。

だから今を頑張って生きなくては!

と思って絵を描き、働き、暮らしていました。

そんなうまくいかない作家活動のなか、

私生活の変化から心身を崩してどん底まで落ちました。。

全てが0になって、、いや、マイナスになりました。

家族の助けを得ながら、病院やカウンセリングに行く日々。

心身がボロボロになってしまって

絵も描けなくなってしまいました。

正確には、それまで描いていたモチーフも、テーマも、技法も、

全部できなくなったという感じです。

今まで、どうやって描いていたのかすら分からない。。

それに、刺激の強いものは見たくないし、描けない。

人も、動物も、食べ物も、

工業製品も、強いものも、個性的なものも、

暴力的なものも、悲観的なものも、暗いものも、

お化けも、モンスターも、映画もドラマもバラエティもニュースも新聞も、

何にも見れない、描けない。。。

作家としても0になりました。

「何か1つでも描けるものはないかな・・。何か描きたいです。」

そう思って、周りを見渡して、何とか描けたのは、

近所の草花や、ネットや本で見た自然の風景でした。

その絵は、スケッチのような絵でした。

なんとか絵が描けてよかったと思いました。

描ける絵があってよかったなぁ、と感じました。

私は、

周りの方々のおかげで、

光の見えないどん底の中を

なんとか生き延びていました。

そんなある日、

外を歩いていた私は、

ぼんやりとして、体がうまく動かなくなりました。

とても歩ける感じではなくなり、

近くの植え込みに腰掛けて休むことにしました。

その時、ふと植え込みに目を向けると、

白くて可憐な花が咲いていました。

風に吹かれて、

ふりふり、ゆらゆら

小さな白いマーガレットの花たちが

気持ちよさそうに陽の光を浴びています。

風に合わせて

ふりふり、ゆらゆら

あっちへこっちへ

ふりふり、ゆらゆら

自然のまま、

あるがまま、

流れに抵抗しない。

素直に生きている様子に

出会いました。

・・・・

私はそれを見ていたら、

ぽろぽろと泣けてきました。

「肩の力を抜いて、素直にね」

「もっと楽に。もっと軽やかに」

重い心がどさりと落ちるような、

フッと力が抜けて心が軽くなるような、

そんな感覚を感じて、

「私ももっと花のように、素直に、軽やかに生きていきたい。」

と思いました。

花に出会って、救われた。

このことがきっかけになり、

スケッチ程度の絵ではなく

きちんと花を描くようになりました。

季節を追いかけるように花を描き、

モチーフの幅も広げて、風景も描くようになりました。

(自分が花や風景を描くようになるなんて思いもよりませんでした。

出会いとは不思議なものですね。

そこから、ひたすら自分を癒しました。

そして、

心身も少しずつ回復して、作家活動に邁進するようになっていきます。

グループ展、企画展、公募展に出すなどして、

いくつか賞もいただきました。

絵が少しずつ売れるようになり、レンタルもされるようになりました。

百貨店さんで個展も開催して、作品を売りました。

作家として大きく成長することができました。

心身を崩してどん底まで落ちたことで、人のありがたみ、大切さをたくさん知りました。

心も入れ替え、人としてとても変わりました。

花のおかげで絵を描くことができました。

感銘を受けることから創作は始まるのだということも、身をもって学びました。

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この記事を書いた人

サンのアバター サン 画家

画家。(アクリル画。モチーフは主に植物と風景)ギャラリー様や百貨店様での展示販売、ネット通販、レンタルなど。
台湾でアーティストインレジデンスに参加。
高槻阪急(百貨店様)にて個展。
UNKNOWN ASIA2022でレビュワー賞受賞。

みつまたアートでは、これまで得た経験と技術で、絵が描きたい方、上手くなりたい方に向けてアクリル絵の具による花や風景の描き方を教えている。

絵と花と風景と、豆と野菜が好き。脂質とホラーと寒いのが苦手。

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